高田先生と森を歩いているといつも興味深いお話しばかりなのですが、今回特に興味深かったのがブナの育つ環境と菌根についてでした。

下まで読むのが面倒な方のために結論から言うと、凸部の土地に巣植えする

(ある程度固めて植える)とブナは育ちやすいとのこと。

それは何故なのか、興味ある方は続きをお読み下さい。

さて、人間にも腸内細菌がいて消化吸収を助けてくれ、腸内細菌がいないと通常の食事から栄養をとることがほとんどできないと言われております。

同様に、木や草の根にも菌が住んでいて、これらの助けがないと木や草は自然界で生きることができません。

余談ですが、後日調べたところによると、人工肥料をたっぷりまぜた栄養過多の畑は菌類なしでも野菜が育つため、野菜は菌類を助けようとせず菌類は死んでしまうそうです。そして、一度菌類が全滅してしまった土地では肥料を買い続けないと野菜を育てることができないという。実際問題どの程度菌が死んでしまうのかは分かりませんが、大量消費社会において安定的に高品質の野菜を供給しようとするとどこかで不自然になってしまうのかもしれませんね。

閑話休題。面白いのがここからで、ブナ(やアカガシなど)が必要とする菌(外生菌根)と草(やスギなど)が必要とする菌(VA菌)は異なり、それぞれ土中でどちらの菌のネットワークが広くなるかで、その土地で樹種ごとの育ちやすさが変わってくるようです。

特に、草が必要とするVA菌はブナが必要な栄養分を先に分解してしまうため、ブナに栄養がまわらなくなってしまいます。そのため、菌根という観点からみた場合、草が繁茂する環境ではブナは育ちにくくなるというのです。

それを少しでも緩和するため、ブナが必要とする外生菌根のネットワークを広げるのに有効なのが、ブナを固めて植える「巣植え」です。

ブナを巣植えすることで、土中の外生菌根のネットワークを少しでも広げ、草のVA菌に対抗するのですね。

また、VA菌は長時間水に浸っていても耐えられますが、ブナに必要な外生菌根は長時間水に浸かると弱ってしまうので、一般的に水はけの良い場所(凸部の土地)に植えるのが良いようです。

(かといって、降水量が少ない土地であれば水の供給を優先して考えないといけないかもしれませんが、そのあたりはケースバイケースで。)

また、当然ですが、草が生えにくい日の光りの弱いところでは、草につくVA菌が少なくなるため、菌根的にはブナが生長しやすい環境となります。

2017年6月26日